オークションのいろは
COLUMN
リユース経済新聞2026年7月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』
第143回 制度変更前に考える、不正品持ち込みへの備え
2026.7.25このところ、買取の現場を取り巻く環境も少しずつ変わってきましたね。来年4月には、犯罪収益移転防止法の改正に伴って本人確認の運用が変わり、今年11月には免税販売もリファンド方式へ移行します。制度が切り替わる時期というのは、現場としても何かと気を配ることが増えるものです。こうした過渡期には、置きこみや不正品の持ち込みを狙う動きも出てくるかもしれません。こういうテーマはこれまでも何度か触れてきましたが、今回はあらためて、買取の現場で不審な客を見極めるための基本を整理しておきたいと思います。
段階的ヒアリングで背景を探る 挙動から見極める違和感
まず見たいのは、持ち込まれた品物とその人の雰囲気が合っているかどうかです。最近は、若い人が高額な宝飾品や金券を持ち込む例も増えていると聞きます。もちろん、若いから怪しいという話ではありません。ただ、車で来ているのに免許証を持っていない、あるいは免許証以外の身分証だけを出してくる。顔写真のない身分証しか提示しない。申込書を書く際に、身分証を見ながら生年月日を一文字ずつ写している。こうした小さな違和感は、やはり見逃さないほうがいいですね。
次に大事なのが、入手経緯をどう聞くかです。ここは、もしも普通のお客様だった場合に不快にさせてしまうので、聞き方には気をつけたいところです。たとえば「こちらはいつ頃ご購入されたお品ですか」「差し支えなければ、どちらでお求めになりましたか」といった形ですね。相手に警戒心を与えず、会話の流れの中で自然に聞いていくのがコツです。
ヒアリングの流れとしては、まず本人確認証の出し方が自然かを見る。次に反社確認を行う。そのうえで、品物を見ながら、いつ・どこで・いくらくらいで買ったのか、自分の物なのか、国内免税品ではないか、希望額はいくらか、と順に確認していく。この流れがやりやすいでしょう。ヴィンテージ品であれば、長く使ってきた話や、探して手に入れた経緯など、自然と背景が出てくることが多いものです。逆に、「もらい物でよく分からない」「昔から家にあった」だけで話が深まらない場合は、付属品の有無、なければどうしたのかまで一歩踏み込んで聞いてみる。話の筋が通るかどうか、そこを見たいわけです。
昔、私のところに一人の男性が時計を何本か持ち込んできたことがありました。よく見ると、全部ベルトのコマ数が違うんですね。これはさすがに怪しいなと思いました。こういうとき、経験がなかったりすると、どう断るか迷いますよね。 私なら「少しお調べするのにお時間いただきますが、よろしいですか」と、いったん時間をもらう形にします。相手が平然と「どうぞ」と言うなら、不信感は少し薄れますし、逆に不正な品なら長居したくないはずですから、そこで引いていくことも多い。時間が取れれば、品触れの確認や社内相談にもつなげられます。
制度が変わる時期ほど、現場は基本に戻ることが大事です。書類や機械に頼るだけではなく、相手の出し方、話し方、品物との釣り合いを見る。地味ですが、結局そこがいちばん強いですね。過渡期だからこそ、買取の最前線では、この基本をもう一度丁寧に確認しておきたいところです。
