オークションのいろは
COLUMN
リユース経済新聞2026年5月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』
第141回 話題の新作発表、期待通りも肩透かしも
2026.5.255月は、新作発表の話題がひと段落して、実相場が見えてくる時期ですね。4月に開催されたウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2026では、ロレックスをはじめ各ブランドが今年の新作を打ち出しました。皆さんもすでに一通りチェックされたのではないでしょうか。
新作話題の一方、相場の視線は旧型と金無垢へ
今年のロレックスは、オイスターケース100周年、デイデイト70周年という節目を意識した構成でした。新しい合金素材を使ったデイデイト40などを見ると、派手に目先を変えるというより、素材の魅力や、長く使う価値を丁寧に見せにきている印象です。高級時計としては近年、切っては切り離せない「値段が上がりそうだから買う」ということではなく、実用性や所有する満足感に訴えかけているような見方もあるようです。
その影響もあってか、古物相場では新作そのものより、旧型やディスコンモデルへの視線が強まっています。分かりやすいのはGMTマスター2の赤青ベゼル、いわゆるペプシのRef.126710BLROですね。ディスコンの噂が広がった3月頃から相場は大きく上がり、5月上旬には新品が450万円以上まで上昇したと聞きます。こういう動きは、やはりロレックスらしいですね。
もう一つ面白いのはミルガウスです。今年は生誕70周年ということで、復活や記念モデルを期待する声もありましたが、新作発表はありませんでした。市場的には肩透かしを食らった格好ですが、その反動もあってか、2023年に廃盤となったブルー文字盤のRef.116400GVがあらためて見直されている印象です。
一方で、海外の空気は少し慎重です。4月の香港ショーは、人はいるけれど買い気はやや弱含みだった、という声も聞こえてきました。中東情勢の影響なのか、中東系やアメリカ系バイヤーの姿が薄く、相場のブレも日本より大きいようです。つまり、海外は様子見、日本は底堅い。いまはそんな温度差がはっきりしてきたと見ていいでしょう。
そのなかで、やはり強いのが金無垢系です。ロレックスのデイデイトRef.18238Aあたりは、昨年秋に230万〜240万円ほどだった国内古物相場が、いまは300万円前後まで来ています。ロレックスに限らず、古いオーデマ ピゲの板ブレスやピアジェなども高値が続いていますね。機械式時計としての評価だけではなく、宝飾品としての価値、つまり地金としての強さが相場を押し上げている面が大きい傾向は、より強まっています。
こうして見ると、今後の仕入れで大事なのは二つです。一つは、新作の話題に引っ張られすぎず、その影響がどこに波及するかを見ること。もう一つは、金相場と国内実需の強さを踏まえて、旧型の無垢やコンビ、あるいはカルティエの定番のような「売り先が想像しやすいもの」を丁寧に拾うことです。
ロレックスの新作が本格流通するのはこれからですが、その前に周辺相場はもう動いています。目立つ新作を追うよりも、その周辺で何が上がっているかを見ながら、夏に向けた仕入れを上手く組み立てていきたいですね。
