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COLUMN

リユース経済新聞2026年3月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第139回 トケマッチ後の市場対応をあらためて考える

2026.3.25

トケマッチ事件の主犯格が逮捕されて、事件としてはひとつの節目を迎えましたね。ですが、だからといって現場の運用が変わるわけではありません。今回は、事件発覚当時に古物市場業界がどう動いたかを振り返りながら、いま改めて気を付けておきたいことを書いてみたいと思います。

トケマッチ事件では、2024年1月の発覚後かなり早い段階で被害品リストが業界内に共有されました。ですから、品物がそのまま古物市場に流れてしまうリスクは、当初からかなり抑えられていた印象があります。その後、警察から正式な品触れも発出されて、各古物市場や買取店にさらに厳格な情報が回っていきました。このあたりの動きは、業界としてかなり早かったですね。

ここであらためて「品触れ」について整理しておきましょう。品触れとは、盗品や遺失物の早期発見のために、警察が古物商や質屋に対して、被害品の特徴や写真、型番などを通知する手配書のことです。該当する品物が見つかった場合は、その場でロックして、勝手に他所へ動かしてはいけません。すぐに警察へ連絡し、提出する義務があります。基本の”キ”ですが、だからこそ、こういう事件があるたびに確認しておきたいですね。

ですから、トケマッチ案件の時計についても、主犯格が逮捕されたから対応が変わる、という話ではありません。事件当時も今も、そしてこれからも、品触れや被害品情報に照らして慎重に確認していく。現場でやることは変わらないわけです。

もっとも、気を付けるべきなのはトケマッチ案件だけではありません。足元は相場全体が強い。金相場は高止まり、ブランドジュエリーもどんどん値が上がっていますし、時計も無垢やコンビを中心に高騰傾向ですね。こういう相場になると、持ち込みも増えます。実際、メディアで金相場が取り上げられるたびに、「これいくらになりますか」と相談や査定依頼が増えるのは、皆さんの現場でも同じではないでしょうか。

そういう時こそ、品物だけではなく”人物の真贋”がおろそかにならないよう、気を配りたいところ。持ち込んだ方の雰囲気と品物が釣り合っているか。入手元を聞いたときに、話がすっと通るか。こういうヒアリングが大切ですね。もちろん、見た目だけで決めつけるのはよくありませんが、違和感を見逃さないという意味では、やはり現場感覚は大事ですね。

また、例年は多くの企業が決算期にあたる3月は、古物市場等で買い控えが出やすい時期ですが、今年は少し様子が違います。国内小売が強いこともあって、各社とも買い気はまだ落ちていない印象です。年内に予定されている免税制度変更も見据えて、上半期のうちに売上を作っておきたい、そんな空気もあるのかもしれません。ですが、相場が強い時ほど「とにかく物を確保したい」という気持ちが前に出やすいものです。買取の現場ではそういう時こそ、確認を雑にしない。ここが大事だと思います。

トケマッチ事件は、業界に大きな教訓を残しました。事件そのものが進展したことと、現場の確認作業を緩めていいこととは、まったく別の話です。「もう終わった話」ではなく、あらためて気を引き締めて実務にあたる事例として受け止める。そんな意識で、引き続き慎重に向き合っていきたいですね。

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