オークションのいろは
COLUMN
リユース経済新聞2025年10月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』
第134回 “値頃感”のあるヴィンテージのねらい方
2025.10.25近年人気のヴィンテージ、すっかりトレンドとして定着した感がありますね。あらためて、プロとしてこの市場と向き合うには、なぜ今ヴィンテージ人気が高まっているのか、裏側にある理由を考える必要があると思います。
競争激化。顔を合わせたネットワーク構築が武器
大きな要因の一つは、やはり現行品のメーカー定価が非常に高くなっていることでしょう。例えばシャネルの「プルミエール」。かつては20万円台で購入できましたが、今や100万円を超える価格帯です。もちろん、中古市場の相場も上がってはいますが、それでも10万円台から探せるヴィンテージには、現行品と比べた際の”値頃感”が魅力ですね。近年はメーカーが往年の名作をリバイバルする流れもあるため。復刻モデルが現在の高い定価で発表されると、往年のモデルに注目が集まります。
シャネルに限らず、定価の上昇は今に始まったことではありませんが、現行品とヴィンテージでデザインラインが大きく変わらない点もポイントですよね。カルティエの「タンクフランセーズ」なども同じ理屈で、憧れの現行品があるからこそ、その原型であるヴィンテージモデルが注目される、という流れができています。
ヴィンテージと聞くと、なんとなく「ハードルが高そう」と思われがちですが、シャネルやカルティエなどは比較的扱いやすい「入口」としてのヴィンテージ。仕入れにあたっては真贋やコンディションの見極めが中心で、相場も10~20万円台がメインのため、参入ハードルはそこまで高くはありません。
一方で、ロレックス4桁型番のエクスプローラーやサブマリーナーなどのヴィンテージは、一気に難易度が上がります。ここでは本物かどうかという話に加え、針やダイアルといった各パーツの製造年代がそれぞれ合っているかという「整合性」が価値を大きく左右します。メーカー修理に出された個体で、パーツが新しくなっていて価値が下がる…なんてこともありますから、バイヤーは注意深く検品しています。
肌感覚として良質なヴィンテージ品が年々市場から姿を消しています。特にロレックス デイトナの4桁モデルなどは、出品されれば1,000万円以上の値が付くこともあり、どこどこの市場に出たという情報は瞬く間にバイヤー間を駆け巡るため、競争率の高い商材でもあります。ヴィンテージを扱っていくなら、まずは前述のシャネルやカルティエからねらいをつけてみることをおすすめします。
そして、良いヴィンテージが市場から減ってきている今、ネットオークションだけで良い品を仕入れるのは難しい面もあります。だからこそ、日頃から古物市場や業者間で築いてきた信頼関係が活きてくると思います。ヴィンテージを扱うバイヤーも、その先にいるお客様も専門知識を持った方が多いですから、顔を合わせた商談や情報交換が、何よりの武器になるのではないでしょうか。
