RK ENTERPRISE

オークションのいろは

COLUMN

リユース経済新聞2025年9月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第133回 秋の仕込み、市場の読み方

2025.9.25

9月に入り、年末商戦に向けた仕入れ準備を本格化させている方も多いと思います。今回は、8月の相場動向を振り返りつつ、秋の仕入れにおいて注目すべきポイントや、市場の読み方についてお話ししたいと思います。

相場堅調も二極化鮮明 問われる「商品力」の見極め

まず、8月に開催された当社主催のRKオークションでは、落札率はやや下がりましたが、ドル円相場が148円前後まで円安に進んだこともあり、相場自体は堅調に推移していました。落札率については、買い手側の選別がよりシビアになった表れであると見ています。

特に顕著だったのは、メーカー正規品であることを保証する「ギャランティーカード(以下、ギャラ)」などの付属品が欠けていたり、コンディションがBランク程度のモデルに対する評価が厳しくなった点です。たとえば、ギャラ付きで70万円程度の落札が相場だったウブロ・ビッグバンは、以前ならギャラ無しでも10万円下げで落札されていましたが、現在はさらに低い価格での取引きが見られます。

状態や付属品の有無による価格差はここ数年広がっていましたが、4月以降のトランプ関税の影響で、相場感に対する慎重な見方が強まり、その傾向が一層際立っています。裏を返せば「状態が良く付属品が揃っている」個体には引き続き値がついており、メリハリが強いといえます。

さて、秋口は例年、年末に向けた在庫確保の仕込み期で、業者間の仕入れも活発化します。夏季休暇を挟んだ8月を抜けて、9月以降の市場はさらに活気づくことが予想されます。今月行われた香港のウォッチショーも、その傾向を裏付ける内容でした。当社も参加しましたが、前回よりも明らかに商談数が増え、各国バイヤーの関心の高さを実感しました。オメガのカラー文字盤やロレックスのRef.69173(ギャラ付き)、Ref.1601、金無垢モデルなどは特に引き合いが多かったようです。

なかでも、金相場の高騰を受けて、金無垢モデルの存在感は特に増しています。9月中旬現在、金は連日のように値を上げ、連休明けには1日で200円以上の上昇を記録する場面もありました。

カルティエのパシャ32mmやブルガリの金無垢レディースモデルなどは、デザインやブランド価値よりも、地金の評価額が優先され、「溶かして換金」する前提での取引きも多く見られます。人気が続くロレックスやカルティエのレディースモデルは、依然として相場堅調ですが、その多くはステンレスやコンビなど日常使いしやすい素材です。金無垢モデルに関しては、地金相場との兼ね合いを見極める必要があります。

為替や株価といった外部要因が追い風となる今期の仕入れは、年末の売上げを大きく左右するでしょう。モノの価値が一面的ではなくなり、相場・素材・状態・背景といった要素を、複合的に捉える力が求められます。今一度、市場の動きに目を凝らし、確かな目利きと判断力をもって臨みたいところです。

コラム一覧へ戻る