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COLUMN

リユース経済新聞2025年7月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第131回 追加関税目前、香港市場を読む

2025.7.25

4月にコラムで「トランプ関税がどう相場に響くか」とお伝えしてから、あっという間に3か月が経ちました。残念ながら状況は好転したとは言いにくく、あの時にむしろ息苦しい展開が続いています。8月1日には、さらに追加関税が発動されるのではないかと言われており、実現すればブランド古物市場も混乱は避けられないでしょう。

香港バイヤー減も、国内販売好調が支えに

ただ、為替を見てみると、4月時点で一時1ドル143円台まで円高に振れていましたが、7月現在は1ドル146円前後と円安に戻っています。輸入品を扱う側からすれば、円安は仕入れコストが増す一方で、逆に国内販売価格の競争力が保たれやすい。香港ドルも米ドルに連動して香港ドル安が進み、ユーロは香港ドルに対して高くなっているため、商売次第ではメリットを感じる方もいるでしょう。

一方で、香港で開催された宝飾ショーでは、やはりアメリカ系のバイヤーはめっきり減りました。買い付けに来ている業者も、以前ほどの勢いはなく、関税の影響をダイレクトに受けているのが分かります。前述の為替の影響からユーロ圏の業者は増えましたが、全体の来客数はややマイナス。ドバイ、東南アジア系の業者は比較的影響を受けていない様子で、こちらは4月時点から変わっていません。全体的には、どの業者もアメリカ向けの商材輸出が細った分をユーロ市場に回して、ようやくトントンといった状況です。

そんな中でも香港市場は相変わらず侮れません。日本国内の方が、相場が高いこともあり、香港で買い付けて日本で売る流れが活発です。香港市内の店舗で仕入れて、日本で売り捌く日本人ディーラーも増えていますし、新規で香港仕入れに挑戦する国内業者の声も聞こえてきます。香港は蒸し暑いので、真面目で地味な革ベルトの時計はあまり売れません。だからこそ、日本市場で人気の高い革ベルト時計をお得に仕入れられる・・・という動きも一つの手です。
ただ、香港を歩いていると、街の雰囲気も少し変わったなと感じます。中国化が進んだ影響で、以前は香港にいた富裕層が英国に移住したという話も耳にしますし、日本人ディーラーの姿も少なくなりました。代わりに中国本土のバイヤーが増え、小口でもコツコツ仕入れているのが印象的です。

この先の相場で言えば、ロレックスの新作モデルがどう落ち着いていくかも注目です。4月の新作発表直後、市場に流通したモデルたちは“ご祝儀相場”で高値でしたが、5月末頃からは徐々に下がり始めました。オイスターパーペチュアル41 Ref.134300の「ピスタチオ」などは5月末頃には1週間単位で4~5万円下がった時期もあり、デイトナのターコイズ文字盤も以前より値が落ち着いてきました。日本の流通量はまだ多くないため、今後市場に出回れば、もう一段落ち着くのではないでしょうか。

為替、関税、新作モデルの流通量……要素が多くて先は読めませんが、今後、香港で予定されているコインショーなどは相場を占う試金石となっていきそうです。また、だからこそ現場で相場を感じて動くしかありません。こんなときだからこそ、現場の空気を感じることが大切です。私も、ブランド古物市場の現場でしっかり体感しながら小欄で情報をお届けしていきますので、皆さんも良い波を逃さずにいきましょう!

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