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オークションのいろは

COLUMN

リユース経済新聞2025年5月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第129回 「買える人」が持つ3つの力

2025.5.25

トランプ関税が発動されて約1か月。ブランド古物市場の現場では、4月初旬から中旬にかけて、買い控えや様子見ムードが色濃く表れました。ロレックスの6桁モデルでも不落札が続いたほか、特にアメリカ市場向けの商材などは10%前後の相場下落も見られました。これまでの主力ラインが“買われない”という状況から、多くの業者が警戒を強めたのも無理はありません。

"買いの決断力"が明暗を分ける

一方で、香港を中心としたアジアマーケットの市況は比較的安定しており、5月に入ってからは国内の買いも回復基調に動いています。相互関税の一時停止措置期間とはいえ、輸出先を他の国に振り替える動きが進んだ影響ともいえるでしょう。アメリカ向けの商材に頼りすぎず、多方向で売れる先を持つことの重要性を、あらためて感じさせる1か月でした。

こうした先行き不透明な相場の中でも、“買える人”はやはり強いと思います。昨今のオークションはネットや入札式が主流となり、かつての手競りに比べると参加のハードルは下がりました。しかしその一方で、ベテランが長年培ってきた「コミュニケーション力」「相場感」「決断力」といったバイヤースキルは、やはり今も大きな武器です。

かつて主流だった手競り市場では、下見や競り本番でのバイヤー間の交流や、競り上がりの熱量から商況を読み取る“空気読み”が欠かせませんでした。相場はあっても、現場では一手の差し値がすべて。いざというときに一歩踏み込める“買いの決断”は、数字だけを見ていても身につくものではありません。相場は様々なITツールですぐに調べられる時代になりましたが、今、あらためて手競り市場が勃興しているのも、そうしたニーズが背景にあるのだと思います。

今のような非対面式の競りが当たり前になった時代だからこそ、業者間でのBtoB売買や、リアル商談を経験することの価値が高まっています。たとえば、地金相場が高止まりしている今、人気の喜平ネックレスを単品で安く仕入れるのは難しくなってきました。そんなときに、信頼できる卸業者から“ロット買い”で引き受ける提案をもらえるかどうかは、日ごろの関係次第。非対面のオークションだけに頼っていては生まれないチャンスです。

現代はBtoBオークションの効率性と、業者間取引の関係性構築。どちらも経験してこそ、目利きと商談力を兼ね備えた「地力あるバイヤー」へと近づけるのだと思います。市況が不安定な今だからこそ、“売れる”前提でしか動けないバイヤーではなく、“買える”自分でありたいですね。

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