
オークションのいろは
COLUMN
リユース経済新聞2025年4月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』
第128回 「トランプ関税」発動、リユース市場にじわり広がる波紋
2025.4.252025年4月、いわゆる「トランプ関税」が正式に発動されました。ブランド品リユース業界にとっては、かつて経験した金融危機やパンデミックと同様に、先行きが見えない状況が再び訪れた印象です。
国内外で影響に差 冷静な判断が今後の肝に
今回の関税措置は、海外バイヤーとの取引や、BtoBオークションにおいて海外市場向け商材の依存度が高いプレイヤーにとっては無視できない要因です。もちろん、海外市場との直接的な取引がなくても、為替変動などの影響もありますから、対岸の火事とはいきませんね。3月末時点で150円前後だったドル円レートは、4月10日時点では143円前後と、7円近くも円高に振れています。
国内の市場動向を見ると、直近開催された主要オークションで一部商品は5~10%の下落が見られたとの報告があります。やはりアメリカ市場向けに影響が出ているようで、高額帯のカルティエ パンテールやロレックスの無垢系を中心に不落札となる動きが表れています。各社ともアメリカ向けの卸売りは止めて、他の輸出先に振り替えている状況です。ただし、現時点での影響は局所的で、小売事業者は買い控えが見られないようです。
バッグなども、北米市場でも人気のあるヴィンテージ系商材の輸出への影響は避けられないでしょう。とはいえ、現段階では様子見の色合いが濃く、本格的な「売り控え」「買い控え」にはまだ至っていません。相場の面でも、新品エルメスの定番色は堅調に推移しています。
香港市場の変化は顕著です。ユーロ安の影響でやや買い渋っていた欧州バイヤーが動きやすくなった背景もあり、直近では活況の兆しすらありました。ところがこの数週間で様相は一変。ちょうど最近も香港で大きな時計ショーが予定されていたにも関わらず、通常であれば海外バイヤーが続々と集まる会場周辺ではいつものような賑わいは見られませんでした。その一方で、ドバイや中国、東南アジア系の業者はそこまで影響を受けていない印象もあります。輸出時の経由地を香港に切り替えるなど、淡々と対応を進めている様子です。
このように、国内・海外で温度差はあるものの、本稿執筆時点(4月上旬)では様子見の域を出ていません。輸出には逆風となりますが、仕入れサイドにとってはプラス要因にもなるほか、リユース品にとっては割安感や値頃感を打ち出しやすくなる可能性もあります。
こうした多面的な要素を見極めながら、「今、何を仕入れるか」「どのタイミングで売るか」の判断が問われてくる局面が訪れるでしょう。
とはいえ、誰もが薄々感じているように、最終的にはトランプ大統領の“気分”次第という面が拭えません。。。早速、90日間の一時停止措置が取られましたし、明日にはどのように情勢が転ぶか、誰も先が読めない状況です。先行きは不透明ですが、不景気に強いとされ、これまで幾度となく変動の波を乗り越えてきたリユース業界ですから、焦らず、冷静に変化を見つめていきましょう。