
オークションのいろは
COLUMN
リユース経済新聞2025年2月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』
第126回 オークション下見、押さえておきたいポイント(時計編)
2025.2.25ブランド古物市場で時計を仕入れる際、バイヤーにとって下見は欠かせません。オンライン下見が普及していますが、現物を確認できる古物市場では、実際に手に取ることで細かな状態を見極められるメリットがあります。時計のコンディション次第では、利益が大きく変動するため、確認すべきポイントをしっかり押さえておきたいところです。
状態チェックと修理費用の計算で確実な利益を
はじめに、ブランド古物市場では外観から判断できない内部機械などの不具合については、落札後に後交渉の対象となるケースが多いので、その点は安心です(必ず各古物市場の規約は前もって確認しましょう)。下見で気をつけるべきは、品物や付属品の外観チェックが中心です。前提として、出品リストの記載情報は、出品者の申告に拠るため、過信しすぎないようにしましょう。
まず、ケースや風防、ブレスレットなどの外装部分は基本です。ケースの細かな傷や打痕、修理明細書が付属していれば、過去のポリッシュ歴をチェックします。磨きが入るとリセール価値が下がることもあるため、高額モデルでは特に注意が必要です。風防のチップや傷、ブレスレットの伸び具合も確認し、特に経年劣化しやすいモデルは要チェックです。また、本体とブレスレットの年式が一致しているかも併せて見ておきます。ロレックス4桁型番のヴィンテージモデルなど、年式が揃っていないと大きく価値が下がるためです。
次に、文字盤や針の状態です。文字盤の干支染みや針の傷は見落としやすいので、特に注意深く見ます。針の腐食やサビは評価を下げる要因となるため、特にヴィンテージモデルでは慎重な確認が必要です。夜光塗料の劣化や変色にも注意。また、ケースや文字盤確認時に、シリアルナンバーやリファレンスの刻印が、正規品と一致しているかも必ず確認しましょう。
ムーブメントの動作チェックも重要です。機械式時計なら巻き上げの感触や日差、各種機能の動作を確認します。特にリューズのねじ込み不良やクロノグラフのプッシュボタンの動作不良は、修理費用がかさむ可能性があるため、必ず確認しましょう。クォーツ時計の場合、電池切れのものは動作確認ができませんが(電池代は買い手負担にはなるものの)落札後に電池交換して動作しなかった場合、後交渉の対象になります。
初心者がやりがちなミスとして、修理費用を考慮せずに落札するケースがあります。ヴィンテージ時計の修理履歴を確認せずに仕入れると、高額な修理費がかかるリスクがあります。修理明細書が付属していれば、内容を確認し、今後のメンテナンスコストを考慮することが大切です。中には、最終的に修理されていないが、やたら高額な修理料金の見積もりのみ記載されていたり、「メーカー修理不可」など記載されている場合もありますから、足元を救われないように気をつけたいですね。
また、出品リストに「新品」と表記されていても、鵜呑みにしないことも大切です。「新品」の定義は出品者によって異なる場合があり、あくまで参考情報として捉えておいた方がよいでしょう。
時計の仕入れでは、「状態確認」と「メンテナンスコスト」の計算が利益に直結します。オンライン下見は便利ですが、画像だけでは判断できない部分も多いため、実地下見が行われている古物市場なら、積極的に現場に赴き、確実に利益を生む仕入れを心がけたいですね。