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COLUMN

リユース経済新聞2024年5月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第117回 相場は堅調、けれどタマ数に不安あり?

2024.5.25

人によっては最大10連休ともいわれた今年のゴールデンウィーク。新型コロナ5類への移行後としては最長の大型連休だけに、海外旅行へ行く人も多かったようですね。とはいえ、歴史的な円安基調の真っただ中なだけに、ニュースでは旅行先の滞在費に苦心する人々の様子が報じられていたことも印象的でした。日銀による為替介入が行われるまでの間、4月に一時160円まで進んだドル円相場は、海外市場の相場に大きく影響したようです。

春先からショーの売れ行きが好調な香港市場では、ブランド時計の新品相場が急騰し、日本のバイヤーが困惑することに。多くのバイヤーが1香港ドル=19.7~95円ほどのレート換算の頭積もりだったところに、円安の加速化で20円を超える値をつけたためです。この間、ロレックスの6桁型番スポーツモデル、特にGMTマスターなどは6~7,000香港ドルほども高くなり、調整に追われる事態となりました。

世界的物価高で新品減少、二次流通にも影響か

さらに、新品自体の出品数が少なく、相場の上昇に拍車をかける一面も。私が話を聞いたバイヤーの体感ベースですが、以前に比べると新品ロレックスは3割ほども出品が減っているといいます。LVMHを始め、欧州の高級ブランド一次流通市場の消費に陰りがみられるとのニュースもあり、新品の出物が昨年以前と比べて減ってきているのかもしれません。中国は不動産バブル崩壊により失速感は否めず、米欧なども世界的な物価高の波から、財布のヒモが固くなりつつあるとも聞きます。為替状況の違いはあるものの、物価高による影響は日本も同じでしょう。

新品の一次流通数が減少していることで、二次流通市場への影響が考えられそうです。また長らく続く円安から、円建ての取引先への売れ行きが鈍くなり、海外市場間で商品が行き来している傾向も。日本国内の古物市場でも新品や、小売り向けのコンディション良好な中古商品の出品が減ってきている印象です。

一時よりはドル安に振れたとはいえ、本稿執筆時点ではいまだ156円前後の円安であることと、商品の流通数が少なくなるため、相場は必然的に堅調あるいは上昇基調に向かうのではと考えられます。いまのところ、5月の連休前後では日本の古物市場ではそこまで極端な値動きは見られませんが、前述の理由から、相場自体は徐々に上向いていくものと見ています。ただし、物価高を背景に高級品の消費にお金が向きづらい日本市場には商品が出回らず、海外市場に流出してしまう─ そんな状況になってしまわないか、懸念しています。相場の上げ下げだけではなく、各古物市場や小売店の出品数にも注目していくべき状況です。

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