オークションのいろは
COLUMN
リサイクル通信2024年3月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』
第115回 香港ショーに見るブランド古物市況最前線
2024.3.25年始以降続いていた株高は一時、日経平均が4万円を超えましたが、本稿執筆時点では一転、下げ基調に。このまま下がると見る向きもあれば、まだ株高局面は続くとの声もあり、先行きは見通せませんが、少なくともブランド古物の相場は今年に入ってから良い流れが続いているといえるでしょう。
ドル円為替は依然140円台後半の値を付けていて、地金相場は最高値を更新し続けています。その他にも、ラボグロウンダイヤの登場から一時は落ち込んだダイヤ(特にメレ)相場もここにきて持ち直しを見せていたりと、これら様々な要因が相場にポジティブに影響しています。
相場好調、バイヤーの顔ぶれや商品筋に変化
2月末から3月初めに香港で開催されたウォッチ・ギルドショーやインターナショナル・ジュエリーショーでは、売れ行きや人出の多さから、特にその傾向を顕著に感じられたようです。
私が聞いた、参加業者の肌感で恐縮ですが、ウォッチ・ギルドショーの売上が「とても良かった」と言っていた参加業者は7~8割に上ります。近年のショーと比べて人出も多く、これほどの活況は久々だったそうです。参加業者の顔ぶれには変化があり、かつて多かった中国系バイヤーは減り、東南アジア系バイヤーが目立っていたようです。
タイ、マレーシア、ベトナムなど国は様々ですが、いずれも1000万円クラスのパテックフィリップやオーデマピゲなどを積極的に仕入れ、自社のWebサイト等で販売しています。彼らのWebサイトではリシャールミルなどのハイクラス品も取り扱っているようで、前述の中国系バイヤーが減ったことと併せて、海外情勢の移ろいを感じさせられますね。その他は台湾や香港、アメリカやヨーロッパ系のバイヤーが中心ですが、以前と比べるとロシア系バイヤーが増えたとも聞いています。
インターナショナル・ジュエリーショーにおいても、中国本土というよりも、他国に住む華僑の業者や一般客の来場が多かったようです。ウォッチ・ギルドショーの直後に開催されたこともあり、参加業者がそのまま流れてくる格好で、こちらも初日から大いに賑わったそう。商材の売れ行きも各社好調だったようですが、これまでの商況と異なる面も見られました。以前は商品を大量購入する業者が見られましたが、高額系商品を吟味したり、低単価品を数点仕入れしていく傾向があったようです。
株価や地金相場の高騰を背景にリユース市場は活況を迎えている一方で、コロナ禍以前とはバイヤーの国籍や商品の筋に違いが出てきている実情も見えたような気がします。バイヤーはもとより、訪日インバウンドにおいても、かつてのような熱量がいまひとつ見られないのは中国系ですね。昨年の不動産バブル崩壊に端を発する中国国内の景気減退が影響しているのかもしれませんが、再び勢いを取り戻してくれるのでしょうか。