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COLUMN

リサイクル通信2023年12月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第112回 今年のブランド古物業界を表す一文字

2023.12.25

2023年「今年の漢字」が「税」と発表されました。それにちなんで、古物業界を私なりに一文字で表すなら「巡(めぐる)」でしょうか。コロナ禍の入口と出口を経たこの2~3年は、これまで以上に市場のトレンドや相場の上下動が速く、駆け巡った一年だったかなと思います。

目まぐるしく変動する相場、コロナでの高騰収まる

それを表すように、11月まで好調だった国内のブランド古物相場が、時計を中心に12月に入ってから下落に向かいつつあります。11月は香港とアメリカを中心とする海外市場はあまり好調ではありませんでしたが、国内の古物市場は売れ行きや相場感は悪くなかったです。ところが、12月に入ってから国内の古物市場も動きが鈍化し、相場も下落傾向にあります。この状況の背景にはどのような要因があるのでしょうか。

香港のウォッチショーでは、11月からその兆しは見えていました。商品の物量はあるものの客数が少なかったようです。以前までは、ショーの会場であるホテルのフロアから、階下の階段まで参加手続きのために人が並んでいましたが、12月のショーでは混雑していても5~10人くらいと目減りしていました。アメリカやヨーロッパ系のバイヤーも少なかった印象で、9月頃のピークと比べて現在は体感で7割くらいの入場者になっています。マカオや北京のショーはさらに閑散としている状態です。

商品はあるものの買い手が少なく、なかなか売れないため、流通が滞っています。特に、日本からの業者が持ち込む品物は値段が高く、なおさら買い手が付きづらい状況です(以前のコラムでも触れたように、国内相場が高騰しているため)。売れないために香港市場で値下げして販売し、下がった価格で国内へ卸すため、現在は相場がダウントレンドになりつつあります。
時計を筆頭に、ここ2年あまりコロナ禍で加熱したブームが落ち着き、最近は金利上昇や物価高騰、それによる景気の低迷でメーカーの売れ行きが減速しつつあるという情報もあります。そうした背景も古物市場にとっては向かい風となりそうです。

なお人の流れについていえば、香港での12万ドル以上の現金持ち込みに関する税関への申告義務が5年前から定められたことで、手続きに要する負担が増えている影響も考えられます。古物取引の中でもキャッシュレス化が進み、現金取引を主流とする小規模事業者などは立ち回りに苦労している面も見られます。

この業界で偽造品は常に頭を悩ませる問題で、銀座の小売店で発生したすり替え事件なども記憶に新しいですが、最近では香港のショーでギャランティカード(Gカード)の偽造品を用いた取引を持ちかけてくる人も散見されるようです。特に増加しているのはパテックフィリップのGカードの偽造で、例えばパテックフィリップの3000万円程度する無垢モデルは、Gカードの有無で4~500万円ほど価格が変動することもあり「Gカードあり」に見せかけて取引を持ちかけてくるケースが増えています。今年は強盗事件なども頻発しましたから、あらためていうまでもありませんが、国内でも年末年始の繁忙期にはいつも以上に注意を払ってまいりましょう。

さて、今年一年も小欄をお読みいただきありがとうございました。良きも悪きも目まぐるしく動いた2023年でしたが、来年は落ち着いた一年となると良いですね。くれぐれも皆様、良いお年をお迎えください。

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