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COLUMN

リサイクル通信2023年5月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第105回 コロナ禍の3年間を振り返って

2023.5.25

2023年5月8日をもって、新型コロナウイルスの感染症法上において5類に移行されました。2020年から始まったコロナ禍はひとつの区切りを迎え、本当の意味で収束に向かいつつあると感じています。全世界が混乱に陥ったコロナ禍において、ブランド古物業界も当然ながら様々な影響を被りました。5類移行を機に、この3年間のブランド古物業界の変遷を振り返ってみたいと思います。

相場暴落、休会 ネットオクの台頭へ

2019年末から新型コロナが少しずつニュースに取り上げられ始めたと記憶していますが、全国的な話題となったのは2020年2月、横浜港に着いたクルーズ船で集団感染が起きたことがきっかけではないでしょうか。

その頃はブランド古物相場への影響はさほどありませんでしたが、その後日本政府が「感染拡大を防ぐ正念場が今1~2週間」とのメッセージを発表し、潮目が変わりました。外出自粛や一斉休校など、かつて経験したことがないような事態となりました。結果、3月の古物市場は相場が暴落。国内はもちろん、香港マーケットを始めとする海外でもヒト・モノの動きが停滞し、国内市場に大きな影響がありました。ドル円為替は急激に円高に振れ、大きな混乱があったことを覚えています。4月には史上初の緊急事態宣言が発令され、当時は対面式の手競りが主流だった古物市場の開催自体が困難に。大手の古物市場も相次いで休会を余儀なくされる事態となりました。

ウィズコロナ、アフターコロナといった言葉が出始めたのもこの頃。先行きが見えない中、誰もがこの騒動はほんの数か月で終わるような、一過性のものではないのだと思い始めていました。このとき、注目を集め始めたのが「ネットオークション」でした。当時はまだ手競りが隆盛していて、Webを介した古物市場は主流ではありませんでしたが、各社が非対面式の古物市場運営に舵を切りました。

その後も長引く外出自粛や飲食やレジャー消費減退、度重なる緊急事態宣言でブランド古物の相場にも打撃が続くかと思われましたが、予想に反して上昇基調に転じました。富裕層を中心に、旅行やレジャーへの消費から高級嗜好品などの「モノ」にお金を使う傾向が強まり、相場を後押ししました。加えて、2021年秋には米大統領選でバイデン氏が当選し、株価が上昇したことも追い風に。

種々の業界で叫ばれた消費低迷とは裏腹にブランド古物相場は好調が続きましたが、2022年2月に勃発したウクライナ危機により経済やインフラに冷や水を浴びせられたことで減速しました。特に上り調子だった時計を筆頭に相場低迷となるも、2022年秋以降にインバウンドが解禁されたことで再び上向いて、現在に至ります。

コロナ経て変化と進化 拡大続く古物市場

ざっと振り返ると、新型コロナ禍のブランド古物市場変遷のあらましはこのようなところでしょうか。古物市場がオンライン化したことなど仕組みの大きな変化はあったものの、こと相場に限っていえば危機的状況はさほど長くありませんでした。

コロナ禍の影響について、よく引き合いにされる2009年のリーマンショックとの違いは(銀行破綻とパンデミックという違いはありますが)、Webが発達し、販売チャネルが充実していることが挙げられます。海外市場とのリレーションが増え、国内外の適した市場に在庫を投入することが容易になりました。さらに、2010年代から国内の古物市場が増えたことでそれぞれが競合しあい、サービスを高めていったことでマーケットの流通が滞らなかったことも大きいでしょう。ネットオークションの急速な発達は典型例といえます。

こうして振り返ると、ブランド古物業界に携わる多くの人々の尽力によって発展が支えられてきたと実感します。新型コロナが5類に移行したからといって、長く続くウクライナ危機や、本稿執筆時点(2023年5月上旬)でにわかに現実味を帯びる米国のデフォルトなど、いまだ情勢への不安はぬぐい切れませんが、この3年間の経験を糧に前進していこうと思えています。

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