オークションのいろは
COLUMN
リサイクル通信2022年12月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』
第100回 ザワつく、ロレックス認定中古品プログラム
2022.12.25早いもので、今年もあとわずかですね。小欄は今回で連載100回目を迎えることができました。これもひとえに読者の皆様のおかげと感謝しています。来年も引き続き誌面でお目にかかれたら幸いです。
さて、12月1日に古物業界をザワつかわせる一大ニュースが飛び込んできました。すでにご存じとは思いますが、ロレックスが「認定中古品プログラム」をスタートしました。販売から3年以上経過した中古ロレックスを対象に、ブランドが直々に中古時計を販売していくとのこと。時計業界ではフランクミュラーやリシャール・ミル、ブライトリングなどが先駆けて取り組んでいましたが、とうとうロレックスが飛び込んできました。
現時点は古物相場への影響は軽微と予想
当初はヨーロッパのブヘラ ブティックでの展開となるようで、来年春以降にはプログラムへの参加を選択したそのほかの正規代理店も販売できるようになるそうです。このリリースが発表されてから業界内では様々なトピックが飛び交っています。正直、現時点ではこのプログラムが古物業界、特に日本のマーケットにどのような影響を与えるかは断じづらいですが、わたしなりに思うところを綴ってみました。
業界で一番に気になるのは、この認定中古品プログラムによって「現在の古物市場の相場がどうなるか」です。プロフェッショナルウォッチ(スポーツモデル)を筆頭にプレミアム相場が常態化している日本国内の市況に一石を投じうるのか。
前述したフランクミュラーやブライトリングは、認定中古品のほうが古物市場相場よりも総じて高めのため、古物相場への影響はあまり見られません。ロレックスはどうでしょうか。
ブヘラが取り扱い始めた認定中古品を見てみましたが、ラインナップは正直あまり魅力的な顔触れではないように思いました。デイトジャスト等のクラシックウォッチが主流で、デイトナなどの人気モデルはまだないようでした(もちろん今後増える可能性はありますが)。同様に、価格面も古物品と比べてさほどメリットは見られませんでした。
プレミアム相場が過熱化しているスポーツモデルを、古物相場と同等かそれ以上の値を付けてメーカーが販売するとは考えにくい。かといって割安な価格で提供するとも思えませんから、ラインナップは多少絞るのではないでしょうか。そのため、現時点では古物相場への影響は、少なくとも国内に関しては軽微に留まるのではないかと見ています。
日本国内で認定中古品を取り扱う店舗がどれくらい広がるかにもよります。路面店はプログラムに参加しやすいでしょうが、ほかのブランドも出店する百貨店ではハードルがありそうですから、一気に広がらないのではないでしょうか。
それを逆手にロレックス認定中古品に希少性をのせて、古物市場で転売されることはありそうです。それだけならまだしも、怖いのは認定中古品を謳うコピー品の台頭でしょうか。認定中古品だけに付属するタグに価値を感じる人はいるでしょうし、そこをつけこまれるかもしれません。
一方で、古物相場の過熱化が叫ばれているのは日本国内が主で、海外市場に目を向ければ、相場はどんどん下がっています。今年登場したGMTマスター2 Ref.126720VTNRは、国内では400~500万円前後ですが、220ドル~程度で取引されています。そうした市況を踏まえれば、ロレックスにとってこの認定中古品プログラムの大義は「ブランド価値を守ること」が大きいのかなと思います。最近ではエルメスやシャネルがサステナブルへの取り組みを表明している中で、ロレックスも追従しはじめた、のかもしれません。