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COLUMN

リサイクル通信2021年10月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第86回 長い長い、緊急事態宣言が明けて

2021.10.25

先月30日に、緊急事態宣言が全面解除されました。地域によって差はあれど、今年4月から実に半年近く続いていたと考えると驚きです。まだまだコロナ感染症対策は生活から切り離すことはできませんが、それでもひとつの区切りとなったのかなと思います。

さて、前回の小欄で国内のブランド古物小売が緊急事態宣言によって集客に苦しんでいるといった声があるとお話しました。緊急事態宣言が明けた今、市場は好転しているのかというと、本稿執筆時点(2021年10月上旬)では、まだそれほど明るい声は聞こえていません。とはいえ、解除してから2週間も経っていませんし、世間ではコロナ禍で使えなかったお金を積極的に使おうとする「リベンジ消費」にも注目されています。これから徐々に客足が戻っていくのかもしれませんね。

続く相場上昇、小売回復はまだ先

しかし、懸念はあります。確かに緊急事態宣言による集客減が国内小売への打撃となっていました。一方で、相場の高騰に歯止めがかからないことも市況に影響を与えています。前回も軽く触れたこの点について、もう少し深堀りしてみます。

相場高騰の代表例はブランド時計で、これまでもたびたび小欄で触れていますが、一月単位で見ればその中で多少の上下変動はあるものの、年初から現在まで依然として相場の上昇基調は衰えていません。投機目的を中心とした海外市場が活況で、中国や香港、アメリカを中心にヨーロッパでも需要が高まっています。そうした海外需要に応え、引っ張られる形で国内相場が上がり続け、例えば古物市場でロレックス 116500LNが350万円で落札されたとして、次月の市場では355万円で落札される、といったサイクルが繰り返され、現在の相場が形成されてきました。

正規店ではロレックスは今や人気どころのSSスポーツモデルどころか、オイスターパーペチュアルも入手困難となっていますし、そうした背景も古物相場の高騰に拍車をかけていますね。こうした例はオーデマピゲやパテックフィリップにも当てはまり、ロレックスよりも流通量が少ないこれらのブランドでは、価格の上昇幅もさらに大きくなっています。現在の相場は海外市場が牽引しているため、しばらくトレンドは変わらないだろうと思われます。
また相場以外のトピックでは、猶予期間を経てこの10月から完全に移行した、免税販売の電子化への対応で苦慮している店舗もあると聞きます。緊急事態宣言が明けたとはいえ、国内小売の回復にはもう少し時間がかかりそう。相場は高止まりが続く中、前述のリベンジ消費がどこまで波及するか、年末商戦までの国内市況に注目です。

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