オークションのいろは
COLUMN
リユース経済新聞2024年10月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』
第122回 秋のブランド市場を左右する為替とリスク要因
2024.10.25ここ最近の中古ブランド市場を振り返ると、夏から秋にかけての相場変動は非常に特徴的でした。特に欧州と香港の市場を中心に、大きな動きが見られました。
まず、9月のヨーロッパのショーでは、8月から一転して多くの人出があり、市場が徐々に活発化してきている印象です。8月はホリデーシーズンということもあり、人出は7月と比べると6~7割ほどに減少していましたが、10月からは年末に向けた動きが加速するでしょう。日本の業者も参加しているものの、8月に急激な円高に転じた影響で、手持ち在庫の相場が下落し、赤字覚悟での売り切る姿勢が顕著なようです。多くの業者が在庫のポジションチェンジを図るため、取引自体は活況でした。
不透明な世界情勢でも焦りは禁物、冷静に見極めを
一方、長らく景気の停滞が続く中国にも上向く兆しが見られます。最近の国慶節では香港に多くの中国人が押し寄せたそう。当社も香港の尖沙咀に店舗を構えていますが、現地スタッフによれば、香港の有名繁華街として知られるネイザン・ロードには体感で普段の2~3倍もの人であふれかえったそうです。日本のインバウンドにも再び中国の勢いが戻ってくるでしょうか。少し先ですが、来年の春節にも期待がかかります。並行輸入の新品流通量が少ないのはどこの国も同じですが、こうした背景からモノの売買は活況を取り戻しつつある様子が見られます。
一方で、コロナ禍が明けて一服感を見せていた高級ブランド時計への投機的な動きは、ここにきて顕著に少なくなっています。相場は一時のピークから落ち着き、今はダウントレンドの最中。その中でも、例えばパテック・フィリップのコンプリケーション等の高額モデルは保有しておこうというニーズは富裕層中心にありますが、現在の相場トレンドの中では積極的に買う動きには繋がりづらいですね。
二次流通市場の動きだけでなく、メーカーの売れ行きも以前より勢いがなくなっているように思います。国内だけでなく海外市場でも、ひと月ほど前と比べて相場は少し下がっています。こうした状況から、ロレックスも今後生産量を増やすのではとの見立てもあるようです。以前に話題となったロレックス認定中古プログラムは現在も日本国内では展開されておらず、二次流通市場に与えるファクターとはなりえないため、生産量が本当に増えていくようであれば、注目です。
一方で、ロレックスのサブマリーナーなどのコンビモデルは、地金相場の回復に伴い再び注目されています。中東の地政学的リスクもあり、さらに相場が動く可能性もあります。イスラエルの安全保障危機が現実味を帯びてきている今、万が一、戦争が起きればドル円相場が一気に動くでしょう。「有事のドル買い(または円買い)」円高、円安どちらにも向かう可能性が考えられますが、もしも円高に振れれば相場は一気に傾くと思われます。
また、日本国内では10月下旬に予定されている解散総選挙、海外では11月のアメリカ大統領選挙が控えています。選挙結果によっては為替進行に拍車がかかり、相場に大きな影響を与えるでしょう。特に、年末商戦を控えたタイミングでの急激な為替変動は、業界全体にとって大きなリスクとなる可能性があります。
これから年末にかけての市場動向は、不透明な要素が多いものの、冷静に状況を見極めることが重要です。在庫の回転を意識しつつも、焦って売却するのではなく、市場の流れを見ながら戦略的に動くことが求められます。特にこの先一か月は、為替や地政学リスクを注意深く見ていきましょう。