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COLUMN

リサイクル通信2022年9月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第97回 約四半世紀ぶりの円安。でも相場は?

2022.9.25

ドル円為替が144円/ドルをつけ、約四半世紀ぶりの円安水準ということで世間を騒がせています。今年春に130円台をつけた際は、円安がブランド古物相場にプラスに働いていないとお伝えしました。それから10円以上も円安に振れた今、ニュース等ではブランド買取相場が上がっている等と報じられていますが、実際はどうでしょうか。
結論からいうと、状況は130円台をつけた当時とさほど変わらずで、相場に大きな影響は出ていません。春先よりは反発していますが、小幅な回復です。これだけ円安になっても相場がさほど上がらないのは、どういうことなのでしょうか。

消費低迷で上向かず、鍵はインバウンド

これまでにも幾度か小欄でお伝えしてきましたが、年初までは国内のブランド古物、主に時計相場は過熱化の一途をたどっていました。背景には投機目的のお金が流れていたためで、すべてが純粋な需要によるものではありませんでした。それがウクライナ侵攻を皮切りに情勢が一変、世界的な物価高となって相場が崩れ始めました。さらに、相場を下支えしていた中国・香港市場の鈍化も足かせに。今年春から夏にかけて上海で導入されたロックダウンでモノの流通が停滞したことも重なりました。年初まで続いていた過熱相場が崩れた大きな要因はこの2点です。

ではあらためて、なぜブランド時計は相場が戻らないのか。理由は色々考えられそうですが、相次ぐメーカー定価の値上げは見過ごせません。歴史的な円安を背景にロレックスやティファニーといった有名ブランドが相次いで値上げに踏み切っています。
定価の値上げに伴って、値頃感のある古物に目が向くとの期待の声もあるものの、現場では実感できていません。長引く円安によって各社とも海外からの仕入れを抑えている上、国内消費が上向いていておらず在庫が滞留してしまっていることが、相場へプラスに働かない理由のひとつです。
ロレックスの定価上昇も、以前なら定価の上昇幅に比例して古物相場も上がりましたが、それほど影響が及んでいません。結局、消費が上向かないと為替の差分も相場には跳ね返ってこないのです。

冒頭に述べたように最近はニュース番組等で「買取相場が上がっている」などと買取店が取り上げられますが、番組中に出てくるのは大体バッグのお話。バッグは時計と違って投機筋の影響が大きくなく、相場が安定しているからでしょう。それでもこれだけの円安に見合った相場上昇とは言い難いように思います。
円安の恩恵というとインバウンドが考えられますが、外国人観光客の個人旅行が解禁されておらず行動制限があるツアーが中心のため、かつてのような勢いは未だ見込めないようです。

今後相場が上向くポジティブな要素は、中国市場が活況を取り戻しつつあることですが、ゼロコロナ政策によっていつまた流通が停滞するかのリスク含み。あとは、10月以降に外国人観光客の個人旅行解禁の話も上がっていますので、この円安下ではインバウンドに期待を寄せざるを得ません。
またLVMHの発表によれば今年1~6月までの日本国内の売上高は前年比で増加傾向にあるそうです。皮革等のアパレル製品が主と思われますが相場にマイナスの話ばかりではありませんから、10月以降のトレンドを注視していきましょう。

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