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COLUMN

リサイクル通信2021年11月25日発行号 掲載コラム『ブランド市場バイヤー 齋藤 清の俺に学べ!!』

第87回 古物業界でよくいう○○筋って?

2021.11.25

緊急事態宣言が開けてひと月半以上が経過した今、メディアが報じる街の声を中心に、景気のトーンが上向いてきたような感じがしますね。実体経済はともかく、政府による経済支援策も打ち出されることで、前向きなトピックが続いています。今年の年末商戦は、なんとか笑って過ごしたいものです。皆さんもいまから年末に向けて、売れ筋商品の確保に動いているのではないでしょうか。

ところで「売れ筋」や「死に筋」って、商売の現場でちょくちょく出てくるワードですよね。言葉のとおり、売れやすい商品やカテゴリ、系統を指していう言葉で、死に筋は逆に売れ行きがよくないものを指したりします。ブランド古物の現場でもよく「小売り筋」や「海外筋」なんていわれる商材があります。これらの言葉、なんとなくニュアンスは分かるんだけど、具体的な意味はと聞かれると、知らない方も多いような気がします。今回は市場でよく出てくる○○筋の意味をお話します。

〝知ってるつもり〟の業界用語を再確認

「小売り筋」は、簡単にいえば"そのまま小売り店に出せるような商材"です。時計を例に挙げれば、「付属品が完備していて」「ガラス(風防)に傷がなく」コンディションが良いモデルです。また、一般的に広く知られていて需要が多い有名モデルであることも条件です。そして、付属品の中でもボックス(箱)が付いているか否かが、後述の海外筋との分かれ目になります。

続いて「海外筋」について、ブランドやモデルという括りでは、前述の小売り筋とそれほど変わりありません。国内と海外でブランドやモデルの人気にはさほど偏りがなく、人気どころはほとんど同じだからです。小売り筋とされる商材との違いは、主にコンディションでしょうか。海外筋の方が、小売り筋よりも状態は一段下がる印象です。

一方で、超高額系の逸品も海外に流されやすいです。マーケットが広く、流通量も需要も国内の比ではない海外市場のほうが、買い手が見つかりやすいですし、基本的に現金での取引が中心となりますから、即現金化したい場合などに重宝されます。
また、ロレックスやルイヴィトンに関してはボックスが欠品している商材は海外筋に分類されることが多いですね。理由として、輸出の際にボックスの有無で費用が変わることと、汎用的なボックスが調達しやすいこれらのブランドは、必ずしも商材に付属していなくても用意できるため、あまり重要視されないからです(パテックフィリップやブライトリングといった、モデルごとにボックスが異なるようなブランドは別ですよ)。

最後は、○○筋とはちょっと異なりますが「潰し」についても触れておきましょう。貴金属でもよく聞く言葉ですが、時計にも使われます。時計の場合は、金無垢のモデルでブレスコマが短いものや、古めの板ブレスレットなんかのモデルを指していわれますね。貴金属の潰し商材同様、素材としての価値のみ求められる商材で、ガラスもムーブメントもすべて取り払って地金として取引されます。これらを落札されると、買い手さんによっては持ち帰るときに梱包材や緩衝材を使わずに、箱にガサガサっと詰めていかれる方も多いです。文字どおり、潰されますからね。

なんとなく知っているけど、実はちゃんと知らない市場用語や業界用語って意外とあるのではないでしょうか。今後も折に触れ、こうしたトピックもお話していきたいと思います。

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